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10HAUS ビッグバン・ネット・シアター「渇いた記憶」「落としあな」

<DATE>2005.6/11・10:30開映  <PLACE>滝野川会館


<主催団体紹介>
10HAUS(テンハウス)
かつては「呪怨」の清水崇監督も在籍していたという山野敏之氏主宰の老舗映画制作団体。東京・北区を拠点に上映イベントを活発に行っている。
演劇の分野でも「劇団マジカルキネマ21」として活動中。I.D.K.とは「BEST OF INDIES MOVIE」「I.D.K.THEATER4」でも上映会を共催。

<参加監督紹介>
中原智仁
体を張った香港アクションを現代に引継ぎ、ワイヤーマクションやコメディを取り入れたハイテンポな作品を得意とする。レストラン&シアターというユニークな上映会も企画。ガンアクションの得意なヤングホリジンの斉藤郁夫監督とタックルを組んで映画アクション道をばく進中。

-アーロンの全上映作品解説&レポート-
関東に住んで早や5年…でも『駒込』で下車したのは初めて、6月11日土曜日の朝9:30に駒込駅北口改札口でI.D.K.のメンバーと待ち合わせして、北区の滝野川会館で開催された『おちゃのこ祭祭』と言う自治体のイベントの一環として行われたテンハウス主催の"ビッグバン-ネットシアター"に行って来ました。畳の香りも新鮮な、珍しい和室での上映会です。
『おちゃのこ祭祭』の開場自体の関係で若干のスタートをずらした結果、最後の緊急飛び入り作品3本まで時間的に観られなかったのがちょっと心残りでしたが、和気藹々とした上映会でした。
さあ!それでは、一作品ごとに相変わらずの独断レポートですが、紹介して行きましょう!


浜川昌宏監督(10HAUS)
クリーチャーハンターミサ』('95 25分)
出演;鏑木ミサ、ほりけん、饗庭

★制作費80万円を投じたと言うパロディー大作です。面白く出来ています。ハリウッド映画『ターミネーター』が下敷きになっています。1995年に作られた作品なので設定がロシアが仕掛けた核弾道ミサイルがきっかけで2029年世界が滅亡すると言う事になっていますが、さしずめ今なら北朝鮮と言う事になるんでしょうか。2029年に設定したのが、1929年の世界大恐慌からちょうど100年目にあたると言うのも、面白い設定だと思いました。未来から現代に送り込まれて来たサイボーグが現代人とふれあう度に、ダサダサになって行く設定も思わず笑ってしまいました。最後の最後、このオチは、この作品にふれる事があれば、是非その時の為に取って置いてください!ヒントは「絶対いやぁ~!!」です。


山岡由和監督(10HAUS)
サイバーエンジェル』('95 25分)
出演;鏑木ミサほか

★『クリーチャーハンターミサ』と同じ年に同じ主演女優で撮られた作品です。兄弟作品と言っても過言では無いでしょう。しかし『クリーチャーハンターミサ』を陽としたら、この作品は陰…まるで『スターウォーズ』のダークサイドのような感覚さえ感じさせます。モノトーンとカラーの使い分け、ゾーンの力、彩子(サイコ)と言う名のシャボン玉を吹く登場人物、ミサと言う名の聖域を思わせる登場人物、女戦士とシャボンの泡のように果かなく消えて行く命…『クリーチャーハンターミサ』を先に観るか、『サイバーエンジェル』を先に観るか、いずれにせよ、セットで観れて良かったと思うし、これからもタックルをくんで上映して行く方が面白い2作品でした。


山野敏之監督(10HAUS)
さよならの法則』('95 20分)
出演;脇坂さと子、岩崎裕司、伊藤正他

★やはり同じ年、1995年に作られた作品です。ここでもモノトーンとカラーの使い分けによる空想と現実の世界が面白く描かれています。しかしそれは主人公に取り付いた?霊が引き起こすモノトーンの世界?…それがやがてカラーの画面の中でも不可思議に起こって来る…お湯を入れるポットがしゃべってみたり、ユリの花が話しかけたり…と…、それでも主人公について行こうとする?めげない女ミカ、…でも避けられないのは狂人の先にある『さよならの法則』…


池田雄之監督(I,D,K.PICTURES)
落としあな On The Edge リニューアルバージョン』 32分
出演;風田次郎、川崎ゆかり、紅城真 他

★我がI.D.K.作品でも、これは異色な作品?ともすればありがちになってしまいそうな作品をとにかくハイテンポにまとめ、ポップで、スタイリッシュに作り上げたところに、逆に作品の重厚さを感じる。リニューアルバージョンで、また一段と洗礼されたようでした。


中原智仁監督
いつだって、マイストロンゲスト』 30分
出演;山下ともち、中原智仁

★見覚えのある会社のマークとテーマで、一気に香港映画の世界に似せた空間に連れ込む。説明なんていらない!楽しければ良いのだ!主役のお嬢様の名前もコテコテ!絶対に謝らないと言う設定も香港映画に出てくる典型的な女性像、実写にアニメとワイヤーアクションをふんだんに取り入れた痛快な作品だ。ダメ押しは、最後のタイトルバックで写されるNG集!!いやぁ~、映画って本当に面白い物ですね!!


井手義和監督(I.D.K.PICTURES)
渇いた記憶 Ran Dry Tears ニューマスターシネマバージョン』 55分
出演;山口拓哉、川崎ゆかり、中村敦子 他

★これも我がI.D.K.の作品…こちらは、正統派! 55分とちょっと長めな感じもしますが、なかなかどうして!最後まで正統派で引っ張って行く演出力は特筆に価するかもしれません。ともすればお笑いやネタに走りがちなインディーズの世界。それを妥協せず、非現実的な主人公を、説得力ある存在に変えて、最後には 涙さえ誘います。これは山口くん演じる“レイ”の、ちょっと渇いた感覚と、相対する中村さん演じる“春菜”の“冷(レイ)”たさを溶かすような“春の菜”を思わせる“暖”かさが物語の対角を作り出しているのが一因でしょう。 また、春菜が片時も手放さないウサギのぬいぐるみが彼女のキャラクターとマッチして、現実の世界から迷宮の世界に誘い込む『不思議の国のアリス』のウサギを思い出させ、レイの心をヒューマンな世界へと導く伏線になっているように感じたのは私だけでしょうか…。良く計算された小道具の使い方だと思いました。


中原智仁監督
香港的刑事』 7分
主演;五所川原仁平、とりいちえ

★7分間のショートムービー!言葉なんか要らない!現に広東語らしき言葉で字幕無しに笑わせてもらいました。香港的らしく、なんでも有りのアクションムービー。やはりここでも女は強い!…残念なのは、色彩をもっとド派手にして欲しかったとこです。


清水崇監督
家庭訪問』 10分
『呪怨』の原点

★上映時間は10分となっていますが、作品そのものはその10分間の中のわずか3分間です。しかしその3分間の中には、言葉で言い表せない恐怖感が凝縮されています。…かつてPFF(ぴあフィルムフェスティバル)で若き日の手塚真(手塚治虫の息子)が、やはりショートフィルムで観せてくれた恐怖の世界を思い起こさせます。…これから、あの『呪怨』の世界に広がり、ハリウッドでもリメイクされて行く原点を観れた事は、幸運でした。むしろ秘めたる可能性を観れたと言う事では、『呪怨』より
、こちらの『家庭訪問』の方が面白いかもしれません。